オセロ / シェイクスピア名作映画集 CCP-298 [DVD]
オセロはヴェニスのムーア人。妻の名はデズデモーナ。将軍であった彼は、数々の戦争で名を馳せ、市民の尊敬を集めていた。しかし猜疑心の強いオセロは、家臣のイアーゴーから妻が別の家臣と不義の関係にあるという密告を受けると、罠とも気付かずに完全に信じ込んでしまう。オセロは妻の貞操を疑い、嫉妬し、嘆き、そして最後には……。
オーソン・ウェルズがシェイクスピアの四大悲劇のひとつ「オセロ」を完全映画化した作品。
無彩色の画面がかえって強かった。人の業に酔って今回は途中で中断しました。作品自体は時代がかった画像もよく満足しています。体調をととのえ再度チャレンジします。
オーソン・ウェルズとヒッチコックって、女優に対する爛れた視線がただものではないと思うのだ(これは褒め言葉です)。例えばヒッチコックの『鳥』なんて、ヒロインのティッピー・ヘドレンが鳥に襲われる場面で、恐怖に歪む表情をカットバックで見せる描写なんてあまりにしつこくて笑ってしまう。明らかにヒッチは女優が恐怖に怯える表情に悦びを感じている。実際に、ヘドレンは撮影中にヒッチから再三再四セクハラを受けていたと撮影後の会見で語っている。あと『ダイヤルMを廻せ!』でグレース・ケリーが首を絞められるシーンの、あの手の引きつった表情は苦しみの表現以上に、エクスタシーを暗喩していると思わずにいられない。ヒッチコックの演出は、恐怖を媒介とする、女優との擬似性交なのだ。
・・・なんて事を書くと、大監督を貶めているように思えるかもしれないが、筆者が言いたいのは、こうした監督たちは女優を美しく撮るのが本当に巧い、という事。情念がなければ映像は魂を持たない。そしてそれは、オーソン・ウェルズの映画も然り。ウェルズの映画は女優が本当に美しい。『黒い罠』のジャネット・リーは、他のどの出演作よりも美しいと思うし、暗示的ではあるがかなりヤバいシーンもある。
前置きが長くなってしまったが、本作『オーソン・ウェルズのオセロ』は、劇場で観た時に、その芸術至上主義とも言える張り詰めたような白黒の映像と、ウェルズ映画中でも屈指のエロティシズムを漂わせるヒロイン殺害シーンに慄然となった傑作。いままでDVD化されていなかったのが不思議なくらいだ。
物語は、あまりに有名なシェイクスピア悲劇なのでくどくどと書くつもりはないが、ヴェネチア公国に仕える将軍・オセロ(O.ウェルズ)が、佞臣イアーゴ(マイケル・マクラマー)の姦計に嵌められ、忠臣や貞淑な妻デスデモーナ(シュザンヌ・クルーティエ)への疑心暗鬼に囚われ、やがて破滅へ向かってゆく・・・。
ウェルズ映画は製作過程で不遇な扱いを受けたものが決して少なくないが、この映画は中でも非常に数奇な運命を辿った作品で、'49年に製作開始するも、制作費が底をついてたびたび中断。多くの映画に出演しながら少しずつ少しずつ撮影され、10回の中断を繰り返すなか、5人の撮影監督、3人のイアーゴ役、11人のデスデモーナ役が交代し(実はこの映画、前記の理由から主要キャラクターが一堂に会するシーンがなく、ウェルズの編集の妙技で完成された作品なのだ)、撮影終了まで4年の年月を要した。ヘンリー・ハサウェイの『黒ばら』出演時には、同映画のスタッフを使って、夜間ひそかに『オセロ』の撮影をし、ハサウェイの怒りを買ったというエピソードまである(笑)。
しかし、そうしてまでウェルズが情熱を傾けた本作は映画芸術と呼ぶべき傑作で、表現主義的な構図の素晴らしさ(モロッコにある15世紀の要塞の、林立する石の柱と広大な空との対比、美しい床の装飾をアーティスティックに捉えた画づくり、そして十八番の光と影の陰影の美学!)なども相まって、本作は'52年カンヌでグランプリに輝く。
しかし、アメリカで'55年に公開された時は興行惨敗し、その後ネガが行方不明となり、廃棄されてしまったとか、ウェルズがホテルの一室に置き忘れた、とかいった噂と共に、37年もの間、映画ファンの間で観る事の叶わない「幻の作品」となっていた。
しかし、ウェルズの娘ベアトリスの捜索によって、20世紀フォックスの倉庫で奇跡的に発見、修復作業が施され'91年にNYでプレミア上映。'93年に「日本初公開」された時に、筆者は劇場のスクリーンでこの映画の鮮烈な美しさに心奪われてしまった。
シェイクスピア劇なので、主人公やヒロインが悲劇の死を遂げることを書くのは、ネタバレにはならないと思う。というか、そもそもこの映画はオセロとその妻デスデモーナの葬列のシーンから始まるのだ。紺碧(と言っても白黒映像だが)の空をバックに、シルエットと化した葬列が城壁の上をゆっくりと進んでゆくカットは一種幻想的でもあり、この冒頭からいきなり引き込まれてしまう。
あとは・・・石造りの舞台の中に際立つ「白」のまぶしさ。羽ばたく鳩、はためくヒロインの白い衣装、そして純白のハンカチ・・・いや、これ以上は書くだけ無粋というものだ。息を飲むようなこの映像の素晴らしさは、観て頂くしかない。
もうひとつ、筆者の心を捉えて離さないのは、ヒロインのデスデモーナを演じるシュザンヌ・クルーティエの美しさ。彼女の清楚な面立ちに心奪われない男子はいないであろう。大人の女性ながらも、少女のあどけなさが残る可憐な風貌で、ウェルズ作品中でも屈指の清純、淑やかさを誇っているヒロインだと思う。それゆえに、クライマックスのエロティックな殺害シーンに肌が粟立つ。
このシーンが・・・詳細はあえて伏せるが、実にエロティックで美しいのだ。殺人という背徳的行為を、一種芸術的な魅惑に満ちたワンシーンとして描いてしまうウェルズの呪われた才能には、震えずにはいられない。
ウェルズはヒッチと違って、露骨に女優への情念を見せることはしないが、暗示的な表現の中に抑え込んだエロティシズムは凄いと思うのだ。それが全編にわたって女優を美しく捉えた撮影に凝結しているのだが、その情念がいわば「爆発」するのが、本作のデスデモーナ殺害のシーンなのではないだろうか。
考えたら、ウェルズの映画って、いまだにDVD化されていないものが多いのだが、本作もDVDで発売されていなかったのが本当に不思議で仕方がない作品だった。しかも、発売されたはいいが、「シェイクスピア名作映画集」って・・・ウェルズよりもシェイクスピアがフィーチャーされてる始末(笑)。そんな訳で、ウェルズ論で展開するレビューと相成ってしまった。というか本作は「オーソン・ウェルズ映画」なのである。断じて。
気になる画質だが、おそらくLDで発売されていた時のマスターを転用しているものと思われる。DVD用にレストアされたものではなく、傷が目立つカットも見受けられる。しかし、この映画が辿った数奇な運命を考えれば、あまり文句も言えない。
ワンコインDVDには、海賊版ビデオかと思うような酷い画質のものがいまだにあるので、そうした粗悪ソフトと比べれば、本商品はずっとまともなソフトだと思う。本作の海外でのソフト事情は、残念ながら不勉強で判らないのだが、500円という安値を考えれば、いつの日か完全レストアされたニューマスター版が発売されるまでの「つなぎ」としてなら全く問題なし。
何よりも、あの戦慄すべき美しいデスデモーナ殺害シーンを再び、いやこれから何度も繰り返し観ることができるのだから。
オーソン・ウェルズ作品の中で、最も美しい映画です。
前作「マクベス」とは打って変わって、ロケ主体で撮られていますが、
それが開放感のある素晴らしい画面になっています。
製作に数年かけていますが、それだけのことはある、
緊密で重厚な作品に仕上がっています。
「市民ケーン」と同じくらい、いやそれ以上に好きな一本です。
ビデオテープは持っていますが、DVDを欲しかったので、購入しました。
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