A [DVD]
1994年の松本サリン事件や1995年の地下鉄サリン事件などで日本中を震撼させたオウム真理教(現・アーレフ)。本作は、あくまでも中立的立場を固持しつつ、教団の広報担当者・荒木浩に密着取材し、「なぜ事件が起きたのか?」ではなく「なぜ事件の後も信者で居続けるのか?」という点を追求していくドキュメンタリーであるが、その中からオウムのみならず、彼らを糾弾するマスコミや現代社会全般に対しても鋭いメスを入れていくという、まさに日本の闇を突いた衝撃的問題作でもある。
監督の森達也はTVディレクター時代に、オウムを絶対的悪として描くよう強要するプロデューサーと衝突して契約解除され、以後自主製作として本作を完成させた反骨の人物。観ているうちに、今自分が日本人として日本で生活していることまでも改めて考えさせられてしまう意味でも、必見作といえよう。(的田也寸志)
森監督の「オウム内部から日本の社会を見る」という視点は、「オウムは悪、社会は被害者」という多くの日本人が無意識に下していた判断を「オウムとは何か」というより根源的で困難な問いに引き戻すものだ。そしてわれわれに「もう一度考えよ」と迫る。
地下鉄サリン事件に連なる一連の凶悪事件のことを何も知らずにこのドキュメンタリーを見たら、この大人しい若者たちが、メディア、警察、近隣住民になぜここまで問答無用でつるし上げられているのか、奇異に映るだろう。いったいこの人たちは何をしたのだろう、と。それほどまでに彼らに「狂信」や「妄信」といった言葉がそぐわない印象がある。意外だったのは、彼らがかなり自分たちを客観視できているということだった。「みなさんにはこう映るのでしょう」「マスコミの方たちもお仕事ですから」と、自分たちを追及する人間たちにも丁寧に対応している。テレビ局や警察のほうがよほど横暴で、言っていることに筋が通っていないと思える場面が多かった。オウム信者たちの立ち退きを要求するアパートに張られたビラは、それじたいが過激な宗教由来のものに見えた。
森氏本人は、中立的なドキュメンタリーなど存在せず、そこには作者の意図が入り込むことには自覚的である。ハリー・ポッターのような、童顔で人当たりのいい荒木浩はじめ、オウム信者のなかでも比較的まともな人間を選んで密着し、マスコミ、警察、住民らから、理不尽な言葉を浴びせられながらも淡々と職務をこなしているさまを撮れば、普通の人がみていくばくかの同情を感じる映像に作り上げることはさほど困難ではない。すべてのドキュメンタリーはプロパガンダの要素を持っている。では報道資料、ニュース映像が中立的で客観的かといえば、このSNS全盛の時代、まったくそうでないことは多くの視聴者が理解している。ただ、このドキュメンタリーが公開されたころは、インターネット人口も非常に限定的で、グーグルやブログといった言葉さえ一般的ではなかった。マスコミの報道はいまよりも圧倒的な影響力を持っていたと思われる。
森氏はオウム信者に同情的でもなければ、共感しているわけでもない。もともと「オウム以外だと仕事にならなかった。やりたくてやったわけじゃない」とあるインタビューで答えている。密着しても彼らの「闇」などは見えてこず、幼稚さや固陋さが剥き出しになっているばかりで、うんざりしたのではないだろうか。
森氏はオウムを撮るうちに、オウムそのものというより、それをとりまく日本社会の異常性に気づかされたのだと思う。信者の一人が、凶悪事件を起こした教団として迫害されることは「ここまでしないと修行しないからと、尊師がわたしたちを窮地に追い込んでくださったと思っている」という内容の発言をしたすぐあとに、「グルがどんな人間でも私はかまわない」と語っていたのは興味深い。グルがどんな人間でもかまわないうことは、「オウムでなくてもよかった」ということだからである。
「オウム」というものを絶対悪として執拗に叩くことにより、「オウムでなくてもいい何か」から目がそらされてしまう。信者の女性が素朴に放った「たくさんの人を殺しても、戦争に勝った者が咎められないのはどうしてなのでしょう?」という質問。この問いに、オウムの「罪」を糾問する立場の人間はどのように答えるべきなのか。「正しい/正しくない」「善い/悪い」という議論は、本来に目をむけるべき問いについて双方が考えぬまま、自己正当化の応酬に流れががちだ。時間は浪費され、本当の問題は忘れ去られ、事実は風化してしまう。
前から気にはなっていたのだけれど、ごく最近になって、ようやく見れた作品。
先に見た人のいろんな意見も聞いた。様々なレビューも読んだ。監督自身の著作も読んだ。その他にも色々な情報を事前に仕入れていて、見る前からどんな内容なのかほとんど知っていた。
にもかかわらず、とんでもなく衝撃的だった。
やはり、映像の力は凄い。
監督とプロデューサーが撮影しているのだが、どちらもカメラマンとしては素人に毛が生えた程度。純粋な映像の「質」としては、決して高くない。
ところが結果的に、この不安定なカメラワークが、監督自身の立ち位置の「不安定さ」を見事に描き出すことに成功している。
オウムにも付けない、オウムを非難する世間にも付けない、そんな監督の葛藤がそのまま映像として伝わってくる。
あの事件から10年以上が経ち、この作品が撮影された時期からも随分時間が経つ。その間この国は考えること・葛藤することをやめてしまったのだろうか。
ぼくは、そうは思いたくない。
10年かけても「わからない」ことだらけだ。でも、その「わからない」ことに蓋をしたまま進んでいくことが怖い。
見ていない人には見てほしいと思う。そして葛藤してほしい。
見終わった後、オウムの広報担当者・荒木浩氏に親しみを感じている自分がいる。
視点の違いが洗脳に行き着くという一つの事例になるのだろうか?
あるいはマスコミはうそをつく、という事例提示なのか?
いずれにしても、表層的な理解で安易な判断を下すな、という啓蒙ではあるように思う。このドキュメンタリー自身も含めて安易に判断するな。
村上春樹さんの『1Q84』を読み始めた頃から、再びオウム事件が自分の中に首を持ち上げてきました。... 続きを読む
オウムの浅原彰晃とその一味による地下鉄サリン事件をはじめとする一連の事件は、寸分の疑いもなく許されるべきものではなく厳罰に処すべきである。... 続きを読む
まず、他のレビューでも書かれている通り、この作品は森監督が「オウム=悪」という脚色をつけることに反感して撮ったアンチプロパガンダ色の作品である。... 続きを読む
1997年公開のドキュメンタリー映画は”その後”のオウム真理教と当時教団の広報副部長であった荒木浩の活動を描いて行く。... 続きを読む
森監督は、「初めてキャメラに記録された転び公安」とよく称されるシーンが自慢(『ドキュメンタリーは嘘をつく』より)みたいですが、映像を見たところ、任意の職務質問に答... 続きを読む
森氏の新聞や「ダイヤモンド・オン・ライン」への寄稿をいくつか目にし、その真摯なスタンスや一方に偏らないバランス感覚に、尊敬の念を抱いていた。... 続きを読む
松本氏が逮捕されたあたりからのオウム真理教の荒木氏を中心に中立的な立場で撮影したドキュメンタリー。... 続きを読む
森監督の書籍にはこうある
「テレビ的な技巧のすべてを排除したかった」... 続きを読む
オウム真理教の内部を撮ったドキュメンタリー。
内容を評価する、しないに関係なく「作った」こと自体に意義のある作品だと思います。... 続きを読む
オウム=悪であるレッテルはおそらく、有名な地下鉄サリン事件が
大きな引き金になっているのは事実であると思います。... 続きを読む
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