あの頃映画 「悲愁物語」 [DVD]

あの頃映画 「悲愁物語」 [DVD]
無残美の映像が語る異色大作!


●鈴木清順監督が『殺しの烙印』以来10年ぶりにメガホンを取った作品。本作の後に『ツィゴイネルワイゼン』を手掛ける。
●「巨人の星」「あしたのジョー」で知られる漫画家 梶原一騎による原案。
●昨年惜しくも亡くなった原田芳雄が出演。主人公の恋人役を演じる。また、江波杏子が嫉妬に燃えるストーカー主婦を怪演!


製作年 1977年
原作 梶原一騎


あの頃映画 松竹DVDコレクションとは?
映画会社松竹ならではの大作映画、こだわりの映画、良質映画の数々を、今だからリバイバル。名監督・名優たちが活躍したあの頃の映画を、ご自宅で気軽に楽しめるDVDコレクションとして、100本を超える充実のシリーズラインナップでお届けします。

鈴木清順は、日活時代数多くのプログラム・ピクチャーを量産した後、67年、37本目の作品として「殺しの烙印」を発表、当時の日活社長の堀久作から「訳の分からない映画を作る」との理由で一方的に日活を解雇され、更にその監督作の総てが門外不出で封印されてしまった事から、「鈴木清順問題共闘会議」が組織されての泥沼の裁判闘争、以後長期間に渡って映画が全く撮れなくなった。
(余談ながら、その時の原告弁護団のひとりが、人権弁護士としてシャキッとしていた頃の現民主党代議士の仙石由人である)

80年、無頼派プロデューサーの荒戸源次郎と組んだ「ツィゴイネルワイゼン」が、東京タワー下の仮設のドーム型の映画小屋に掛けるというユニークな興行形態で話題を呼ぶと同時に、日本映画史上に残る摩訶不思議で刺激的なそのアート・フィルムは、同年の各映画賞を総なめし、あろう事か、清順的芸術世界とは無縁であった(と言うか黙殺されていた)映画業界が起こしたお祭りイベントである「日本アカデミー賞」までも獲ってしまい、映画作家として世俗的に遅すぎた名声を得る事になるのだが、今作は、それから遡る事3年の77年に10年ぶりにメガホンを撮った映画、前述の極めつけのカルト作2本を挟む形で位置する鈴木清順70年代唯一の作品、一部で待ち望まれていた初DVD化作品だ。

某大手繊維メーカーが、体操界の花である東欧の妖精を専属タレントとして狙いを定め交渉するも、ライバル他社に抜かれてしまう。なんとか劣勢を挽回しようと次なる“広告塔”として目を付けたのが、新進気鋭の美人ゴルファー桜庭れい子だった、、、。

原作は梶原一騎だけに、中盤まではスポ根的劇画世界に大映ドラマの如き過剰でおどろおどろしい人間描写が続く。
ゴルフ雑誌の編集長ながらまるでゴルフがド素人の原田芳雄。
「巨人の星」の星一徹の如きスパルタ練習を科す佐野周二。
主人公れい子を追いかけまわすストーカー女の江波杏子。
同じくれい子の行き先々で絶えずドッキリの看板ならず、花束を抱えうろうろする野呂圭介。
「警部マクロード」みたいな扮装で登場する警部・宍戸 錠。
登場人物はみなどこかヘンであり、ここら辺までは、鈴木清順というよりも増村保造監督作と呼んだ方がしっくり来る(笑)。
それでも、清順監督らしい部分は終盤を迎えて加速していく。
江波杏子の、れい子への暴走ぶりに歯止めが効かなくなり、ドラマの展開も暴走していく辺りからのケレン味の数々。
益々異様になっていく登場人物たち、不遇時CMディレクターとしても活躍していた事が垣間見えるような色彩、カット割りと映像処理、そして、れい子の大邸宅の奇ッ怪なセット・デザイン。
真ん中にラインのペインティングを入れて上半身裸でコースのフェアウェイを掛け廻る原田芳雄。
桜の満開の下で、れい子の弟が夢想する思慕と接吻の微妙な危うさ。
クライマックスは、近所の老若主婦連中による嫉妬と悪意が剥き出しになっての大乱痴気パーティ。
名コンビである木村威夫はタッチしてないけれど、その感覚は清順映画そのものだ。
正直、結末は凡庸だし、社会風刺もありきたりで、脚色の大和屋竺は(残念ながら、今作の後、彼は病死してしまったが)、今作のプロデューサーでもあった梶原一騎に気兼ねしたんだろうか?と思えるほどで、公開時は怪作、珍品との評価もあったと記憶するが、それでもやっぱり清順映画として、ファンは押さえておかねばいけない作品なんだろうと思うよ。

主演の白木葉子は、梶原一騎がご執心の新人モデルであり、今作が映画デビュー作であった。
マスメディアとスポンサー、視聴者に踊らされ堕ちていく女性の役柄だが、初見時は学芸会並みと思えた演技も再見するとそれほど気にはならない。というか、これも清順さん、逆手に取って狙ってるんじゃないか、とさえ思えてくる(笑)。

松竹提供の「あの頃映画」も続々と初ソフト化作品が増えて来て、“あの頃の”映画たちを熱心に観ていた世代には嬉しい限り。
今後は、山根成之の「突然、嵐のように」や「さらば夏の光よ」も是非お願いしたい処だ。

梶原一騎の原案だろうがお構いなしの、セイジュンワールド炸裂だよ。最初に裸のシーンが多く出てくるのはプロデューサーの希望かな。なんとか客が喜ぶようにと・・・・これ以後のセイジュン作品とも遜色のない作品なのでセイジュンファンはぜひとも見てほしい作品だ。今現在誰もこういう映画撮れないよね。彼の後継者はいるのかな。彼ほんと天才だと思うよ。この映画見たくて、大金払って輸入もののDVDオークションで落札している人もいるのにこんな安い価格で出るなんてすごい。

『(〜略)始めからおかしい映画なんだからいいじゃないかと思うんだけどね』 (←清順、談)

うわぁ、やっちゃった感爆発の大快(怪)作。もう、この映画のプロデューサー大丈夫だったのかしら… と要らぬ心配をしたくなる。前作(あの『殺しの烙印』)から10年ぶりでこの映画を作っちゃう清順。あらゆる意味で、凄い。 
このソフト化で初めて観たけど、個人的にはいい買い物でした。面白かった。★10個!!。

しかし…このタイトル、どうでしょうか…。 
やはりシノプス通り『魔女狩り』のほうがしっくりするような気がする。(←本編中、数回あらわれる緑の照明は魔女を示すらしい)
タイトル決定には制作サイド(たぶん原案者)の(ゴリ)押しもあったのかな、と ‘勝手’ に想像してしまう。 主演(←『期待の大型新人』と予告編で紹介)の芸名も『白木葉子』だし…ね。(あし●のジョーか…)粗筋もホントに三流(失礼!)劇画の展開そのもの。開き直ったような特訓シーン(←タイヤ引っぱってるよ)は爆笑だ。もちろん原案者のパターンなのだけど…それを‘平気で’映像化している清順もいい。 
ただ… 清順はこの題材を好んで扱ったわけではなく、とにかく一本映画を撮る、ということに力点を置いていた、という。(つまり、題材を選んでいない)
まあ、粗筋としてはサクセスに失敗した女性の悲劇といったところですが、面白いのは正直本筋とはあまり関係ない部分ですね(そして実のところ、ソレが清順の本当の本筋なのだった)。

それでも、最初の30分くらいは割合と普通の展開をしている。(少々ヘンだけど…)
だけど…そのうち 『真っ青な会議室』 とか、『縄梯子のある建売住宅(内はセット・外は京王高幡不動駅近辺らしい)』  とか、スゴくなってくる。 (あの『爪の色』はどんな意味?) 
特に『弟と謎の少女が満開の桜の前で語り合うシーン』が気になる。このシーンは三つもある。しかも全然本筋と関係ない(と思う)。
そして、終盤はどこもかしこも不思議な楽しさが爆発!。『近所の主婦が大量に押しかけてきて好き勝手するシーン』の凄い描写。ゾクゾクするような迫力!。この辺り、清順監督のファンだったら最高だろう。
じゃなかったら…開いた口が塞がらないかも。つい、開いた口が塞がらない客(←タイトルに惹かれた普通の客達)が並んだ当時の劇場の様子を妄想してしまった。(本作は不入りで短期間で上映終了してしまった、という)

俳優陣についていえば
江波杏子と原田芳雄。この二人の‘怪演’が最高に良い。ここだけ観ててもいいぐらい。
岡田真澄もまあまあ。(岡田VS原田の奇怪な取っ組み合いは◎)宍戸錠や小池朝雄も野呂圭介もふざけ過ぎでナイス。
でも主演は…かわいそうだった…かもね。デビュー作だったのに。公開直後のインタヴューでも『このクソジジイ!(←清順のこと)』って怒ってますよ。ま、わからんでもないですが。

このソフト、画質はそれなり。(昭和の匂いがぷんぷんしてる映像が◎)特典は予告編のみ。(この予告編は、本編を観た後に必ず観るべし。なぜだか…吹きます。そして演出している清順の姿がワンカットあり)ジャケットには『無惨美の映像が語る異色大作!』とか書いてある。←凄い煽り文句。でもこれは正しくは『異色B級映画の快(怪)作』ですね。

最後に、
‘普通’に女性映画や娯楽映画を観たい方、あるいは浪漫三部作‘しか’観ていない方、あんまり…お勧めしません。 
⇒清順映画は普通じゃありません、から。
日活時代の作品群や浪漫三部作以外にも親しんでいる方。『カポネ大いに泣く』が‘文句無く’楽しめる方、ドンドン観てください。
⇒ 一緒に楽しみましょう!!。多いに推薦いたします!。★10個!!。
そしてなりよりも奇跡のような本作のソフト化に大感謝!。 観ることができてよかった。
コレだけ凄い作品、二度とソフト化されない(かも)。

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