コーマン帝国(Blu-ray Disc)

コーマン帝国(Blu-ray Disc)
“早く! 安く! そして儲ける! "という理念、そして抜群の奇抜なアイデアの数々で長年映画界を牽引してきたインディペンデント映画の神、ロジャー・コーマン。監督作50本超、プロデュース作にいたっては500本を超える作品を世に送り出してきた世界一ケチで世界一多作な映画人だ。“コーマンスクール"とも呼ばれる、コーマン企画で育った著名人は数知れず。J・ニコルソン、F・F・コッポラ、R・デニーロからP・フォンダ、M・スコセッシまで現在ハリウッドで確固たる地位を築いている錚々たる面々がコーマンスクールでの超低予算で過酷な映画製作現場で鍛えられた猛者たち。本作はそんな弟子たちのエピソードや、代表作のフッテージをふんだんに交えながら、映画史を語る上で外すことのできない、アメリカ映画界最重要人間、コーマンの素晴らしき映画人生を描くドキュメンタリー。その凄まじい映画製作に対して2009年には、まさかのアカデミー名誉賞を受賞、そして昨年10月末の第24回東京国際映画祭でのコーマンご夫妻来日の熱狂も記憶に新しいこの世界最高の映画人のぶっ飛び人生、とくとご覧あれ!

すごい面々! ! これがコーマンスクールの生徒たち! ! !
●ロジャー・コーマン●ジュリー・コーマン(コーマンの妻)●ジーン・コーマン(コーマンの弟)●ロバート・デ・ニーロ(『血まみれギャングママ』出演)●ジャック・ニコルソン(『白昼の幻想』脚本)●マーティン・スコセッシ(『明日に処刑を…』監督)●ロン・ハワード(『バニシングIN TURBO』監督)●ジョナサン・デミ(『クレイジー・ママ』『羊たちの沈黙』監督)●ピーター・フォンダ(『ワイルド・エンジェル』出演『イージー★ライダー』製作・出演)●ブルース・ダーン(『ワイルド・エンジェル』『聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ』出演)●ポール・W・S・アンダーソン(『デス・レース』監督)●クエンティン・タランティーノ(『レザボアドッグス』監督)●アラン・アーカッシュ(『ロックンロール・ハイスクール』監督)●ポール・バーテル(『デス・レース2000年』監督『ピラニア』出演)●ピーター・ボグダノヴィッチ(『ワイルド・エンジェル』助監督『ラスト・ショー』監督)●デヴィッド・キャラダイン(『明日に処刑を…』『デス・レース2000年』出演)●ジョー・ダンテ(『ピラニア』監督)●パム・グリア(『残酷女刑務所』『ジャッキー・ブラウン』出演)●ゲイル・アン・ハード(『ターミネーター』『エイリアン2』製作)●ジョナサン・カプラン(『もっともあぶない看護婦』監督)●ポリー・プラット(『殺人者はライフルを持っている! 』原案)●ジョン・セイルズ(『ピラニア』『宇宙の7人』脚本)●ウィリアム・シャトナー(『ビッグ・バッド・ママ』出演)●ペネロープ・スフィーリス(『反逆のパンク・ロック』『ウェインズ・ワールド』監督)●メアリー・ウォロノフ(『フライパン殺人』監督)●アーヴィン・カーシュナー(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』監督)●エリック・バルフォー(『ディノシャーク』出演)

ついに来たぞ、コーマン帝国へ。いや違う。コーマン帝国がやって来たのだ!
550本以上をプロデュース。監督は50本以上。アメリカではB級映画の「帝王」。ヨーロッパでは「法王」と呼ばれるロジャー・コーマン。さしずめ日本ならば、「天・・・(おっと自粛)

とにかく、リスペクトしてやまない筆者は、いつかは訪問せねばと思っていたB級映画の「帝国」が、何と向こうからお越し頂いた訳だから、これはもう観ないというのは不義理という他ない。

語りだしたらもうキリがなくなってしまうのだが、コーマンはハリウッドという巨大な金儲け主義の権化となったメジャー・スタジオに背を向け、資金調達から配給まで、「自主」製作にこだわり続けた人だ。
故に、ハリウッドからは「反逆児」として疎んじられてきた。

コーマンが製作する映画は、一介の弱小プロダクションが製作費から調達する訳だから、どうしても低予算になってしまう。そしてその内容は、バイオレンス、カーチェイス、セックスに爆発という「見世物主義」、エクスプロイテーション・ムービーと呼ばれ、ドライブイン・シアターなどで上映されるような映画だ。だから、尊大ぶった映画評論家センセイや芸術志向の鼻もちならない映画愛好家からは(大抵こういう輩は観ないでけなす)馬鹿にされ続けてきた。
しかし、コーマンがどれほど映画界に貢献し続けてきたことか!
後のアメリカ映画界を背負っていく、若き無名の卵たちに、監督としてのチャンスを与えた話はあまりにも有名だ。フランシス・コッポラ、マーティン・スコセッシ、ジェイムズ・キャメロン、ジョナサン・デミ、ジョー・ダンテ、ロン・ハワード、ジョナサン・キャプラン、モンテ・ヘルマン、etc,etc・・・コーマンの下で事実上のデビューを果たした監督たちの名は枚挙にいとまがない。

彼らの多くは突出した才能を持ち、コーマンの助力がなくてもいずれは監督になったであろう。しかし、例えばコッポラだって、あのタイミングで監督になったからこそ『ゴッドファーザー』の仕事が回って来たとも言えるし、『ドアをノックするのは誰?』で自主製作デビューしたものの、次作の予定が全く立っていなかったスコセッシに『明日に処刑を・・・』の監督をオファーしたのもコーマンだ。この作品を監督した事がきっかけで、スコセッシはカサヴェテスから「君はあんなクソ映画を撮る連中と一緒じゃいかん」と檄を飛ばされ、自伝的な『ミーンストリート』を撮ろうと決意し、『タクシードライバー』へとつながることになる。余談ながら、『タクシードライバー』の中で、デ・ニーロが鏡に向かって銃を構えて一人芝居をするシーンは、実は'50年代のある映画からの引用らしい。つまりこれは映画オタク青年スコセッシならではの遊び心から生まれたシーンで、他の監督が『タクシードライバー』を撮っていたら、あの有名なシーンは生まれなかったのである。
それだけではない。コーマンは、ハリウッドから「金にならない」と思われていた、ヨーロッパの作家性の強い映画を積極的にアメリカに配給・上映した人でもあった。ベルイマン、フェリーニ、そして日本の黒澤作品だってそうだ。

本ドキュメンタリーは、長らく「B級」の烙印のもと、不当に低く評価されてきたコーマンが、いかに映画界に大きな功績を残してきたかをつまびらかにする。彼が製作し続けた「見世物主義」と思われがちな映画群も、実は女性や黒人といった、「当時のアメリカ社会の中の弱者たち」が権力に刃向かうという一貫したテーマにこだわり続けてきたことが判る。『ワイルド・エンジェル』では、単なる暴走族としてしか取り上げられることがなかったバイカーたちを、社会の中で抑圧された人間として初めて描き、テレビドラマの中で模範的な若者ばかりが登場していた時代に、反抗の若者像を描いたのもコーマンだった。
実は、コーマンは、生涯にただ一度だけ、真の意味での作家性と強いテーマ性を追求した映画を撮った事がある。『The Intruder』という、黒人差別問題を扱った映画だ。それについては輸入版に長文レビューを書いているのでここでは繰り返さないが、こうした作品へ挑戦し、挫折した一人の映画作家としての側面にも光を当てた、優れたドキュメンタリーなのである。

インタビューで登場する人々は、コーマンに恩義のある監督たちをはじめ、ジャック・ニコルソン、ロバート・デ・ニーロ、ピーター・フォンダ、ウィリアム・シャトナー、デヴィッド・キャラダイン、パム・グリアー・・・そしてお約束でクエンティン・タランティーノも(笑)。
中でも、ジャック・ニコルソンのインタビュー登場回数が最も多かった印象だが、「あれはヒドい映画だ」「観ることはオススメできないね」などとひたすら憎まれ口を叩いているのだが、映画のラストでいきなり声を詰まらせて泣き出してしまうシーンには筆者も胸が熱くなった。
「ロジャーは、俺がほとんど干されて一番辛かった時期にも、仕事の声をかけ続けてくれた唯一の友人だった」
・・・誰よりもコーマンの事を愛しているのだ、ジャックは(涙)。

コーマンのファンには、大満足の一本。コーマンの事を知らない人でも、一本のドキュメンタリーとして興味深く観ることができると自信を持ってオススメする。

最後に、このドキュメンタリーを撮った監督、アレックス・ステイプルトン(女性)も、何と本作が長編映画監督第一作なのだ。
もともと、雑誌に映画の記事などを書いていた人なのだが、コーマンにインタビューをした時に、ふとドキュメンタリーを撮りたいと話したら、快諾。しかしその後、ハリウッドの超・大物監督(誰だか知りたいものだ!)が同じようにコーマンのドキュメンタリーの企画を進めている事が発覚。無名の彼女では太刀打ちできない。しかし、あきらめきれないステイプルトンはコーマンの許を再び訪れ、どうしても自分が監督をしたいと涙ながらに嘆願したという。そしてコーマンは、いつものあの素晴らしい一言を口にした。
「君がやりたまえ。心配無用だ」
かくして、本作でもまた一人、新人監督が誕生したのだ。
実に粋な話じゃないか!!

現在残るハリウッドの映画会社は全てが資本家による経営だ。まあ世界市場を
考えたらそれ以外の道はないのだが、ユナイトとRKOが出発からして資本家
運営だったのに対し、パラマウント、ユニヴァーサル、MGM、コロンビア
&ディズニーの各社は「映画職人」が創業した会社だ。

しかし職人の手には「興行、余興」はできても「ビジネス」は難しい。
そんな経緯で1950年代くらいまでにはメジャー各社のほとんどが資本家
運営になった。R・コーマンはこの頃に映画製作を始めているので、そもそも
反抗心の塊だったのだろう。

ロジャーが異端児と言われるのも、あくまで資本家からの意見だから。
ロジャーはチャップリンやグリフィス、メリエスら職人の芸術を踏襲しているに
過ぎない。でも後者はいつの世も虐げられる。

ゆえに2009年アカデミー功労賞の場面が滑稽に見えるのだ。
インタビューでも明確な通り、名優J・ニコルソンはG・ルーカスともスティーヴン
とも仕事をしていない(!)。「嫌いだから」と言い放つジャックの素晴らしさ。
その代わりT・バートンとかコーマン組とか「絆」を最優先に出演している。

コッポラやキャメロンなどの門下生は今回1秒も登場しないが、やはり
オトナの事情があるのだろう。
AIPとかキャノンとかカロルコとかフランチャイズとか、金の大小はともかく
こういう会社が短命なのは資本家から支援をもらわないからだ。

ただしロジャーが違うのは「人のふんどし」ではなく全て自己資金であることで、
これは「丸抱え受注」のフランチャイズあたりとは「格」が違うけれど・・・
80歳を過ぎても喜々としてチープ映画を作り続けるR・コーマンには脱帽だ。

日本ではこういう製作者が本当に少ない。数はいるのかもしれないが、何せ資金が
集まらないしね。大蔵貢とか牧野省三とか角川春樹とか、近年でいえば急逝した若松孝二監督
とか、こちら側に転んではダメだよ、と日本の教育は教える。
製作委員会方式は確かにリスクゼロだが、それはそれで大きな問題があると思う。

でも本作を観れば、ある意味「人の生きる意味」までが理解できる作品だと
思う。特典映像は今回の製作スタッフインタビューが収録されている。
星は5つです。

まずこの作品はコーマン氏の半生を弟子たち(すごい面々ですが)が作品を交えて語るドキュメンタリーものですが、編集のセンスがよいのであっという間に観終わってしまった、コーマン氏は実に穏やかにかつ雄弁に話す方で、およそ製作してきた作品とはかけ離れた人物であると同時に実に魅力的な人物だった、また、ホッパー・ニコルソン・デニーロ等のうら若き姿も観られるし、見どころは沢山ある、封入されている「江戸木 純」氏のコーマン映画目録はボリュームたっぷりのもので読み応え十分、資料としても貴重でよくまとめあげたものだと感心、とにかく何かと言えばB級だの・搾取だの・パクリだのと揶揄されるコーマン氏だがこれを観れば明らかに考え方が変わるのは間違いないでしょう、だって今の映画界がやっていることはコーマンが数十年前からやっていたことに巨額を投じているだけなのですから、コーマン氏はTVインタビューで語る・・・映画に大金を投じるのはどうかしている、そんな金があったら社会に貢献すべきだと・・・。

とにもかくにも、映画好きならこの作品は絶対にかかせない物だと断言できる、これを観ずにアメリカ映画は語れないしこれを観てもピンと来ない人はもう映画など観ないほうがいいよ。

↑とレビューのタイトル通り思わず感心せざるを得ないB級映画の帝王ロジャー・コーマンの偉大な実績とその人物像に追った実録ドキュメンタリー。ミシガン州のデトロイトで生... 続きを読む

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