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サヨンの鐘 松竹映画 銀幕の名花 傑作選 [DVD]

サヨンの鐘 松竹映画 銀幕の名花 傑作選 [DVD]
はかなく散った美しき乙女をしのび、哀悼の鐘は鳴り響く。台湾総督府、満州映画協会、松竹合作映画。

台湾(中華民国)がまだ日本軍の支配下におかれていた頃、山岳地方に住む高砂族に美しい娘がいた。名はサヨン(李香蘭)といった。村の若者達の関心はどうすればサヨンの心をつかむことが出来るかということに注がれていた。我先にとばかり愛を告白する若者たち。しかし、なぜかサヨンは首を横に振るばかりであった。彼女には将来を誓い合ったサブロ(島崎溌)という青年がいたのだ。サブロは村から選抜された優秀な学生として日本に留学していた。そのサブロが見違えるような立派な若者となって村へ帰ってくる日が来た。しかし幸福の絶頂を迎えたサヨンに悲劇が待ち構えていたとは…。音楽=古賀政男

太平洋戦争下の日本統治の台湾・台北州蘇澳郡蕃地。山地で、素朴な生活を営む高砂族にも、戦争の影は静かに忍び寄っていた。集落には、17歳の美しい娘サヨン(李香蘭=山口淑子)がおり、思いを寄せるサブロ(島崎溌)が、内地留学から帰って来る日を心待ちにしていた。立派に成長したサブロの帰郷に、サヨンも集落の者も大いに沸く。しばらく集落では平穏な日々が続くが、やがて若者たちに召集がかかりはじめ、ついには、集落で慕われている武田先生(近衛敏明)にも召集がかかる…。

1938年に、台湾の先住民族、高砂族の少女サヨン・ヘヨンが、出征する日本人兵士を見送る途中の不慮の事故で命を落としたという実話を基にした作品。西條八十作詞、古賀政男作曲、渡辺はま子歌による『サヨンの鐘』の大ヒットを受けて(1941年)、松竹=台湾総督府=満州映画協会によって作られた戦時プロパガンダの一編だ。高砂族の生活ぶりを収めているドキュメンタリー的側面も忘れてはならないだろう。

戦時のプロパガンダ一色だった当時の映画界にとって、「サヨンの鐘」の悲劇(であり、当時は美談としても扱われた)は、格好の題材であったであろうことは想像に難くない。しかし、製作側の唯一の誤算は、清水宏を監督に選んだこと。何せ、演出の際に、俳優に「ハイ気持ちなーし!」とすら叫んで(松竹大船撮影所50周年記念作品として作られた『あの頃映画 キネマの天地 [DVD]』で、清水監督をモデルにしたすまけい扮する監督が発したセリフを憶えている人も多いだろう)、感情の吐露や作為的演技というものを出来るだけ排除するのが、清水監督流。そんな監督が、特定のイデオロギーのプロパガンダ作品に適しているわけがないのだ!

実際、清水監督は、戦意高揚ということにはまるで興味がないようで(もちろん、出征を祝うシーンなども適宜挿入されるが)、サヨンと子どもたちの日常風景を淡々と描くことに重点を置いている。作品を観終わって、心に残るのは、プロパガンダの要素ではなく、何より、サヨンがガキ大将よろしく(李香蘭のお転婆な野生児ぶりが良い!)、集落の子どもたちを従えて、自然に囲まれた野山を自由に駆け回る数々のシーンの透明なまでに瑞々しい素晴らしさなのだ。例えば、逃げ出した仔豚を捕まえて、サヨン(仔豚を先頭に!)と子どもたちが、のんびりと歩いて集落へ帰るシーン。あるいは、サヨンが、よちよちと歩く何匹ものアヒルを連れて集落へ帰るシーン(さらに、赤ん坊を背負った子どもたちが、山を駆け下りて来て出迎えるシーンへと続く)。そんな情景を、清水監督は、お得意の緩やかなトラック・バック(後退移動)の長廻しで、サヨンや子どもたちと歩調を合わせて遠足しているかのような感じで延々と捉える。俳優たちの自意識さえ消えた、その「無」とも「素」とも言うべき瞬間を切り取った、穏やかで朴訥な美しさ。清水作品の精髄だ。

「僕が『花形選手(DVD) SYK109S』を撮ってゐた時はどこから芝居になって行くか全然見当がつかなかった。初めのだらだら歩いて居るうちは、これはちっともメロドラマでないと思ふ。そのうちに人に振り向く。ここから芝居のやうな気がする」(『キネマ旬報』1939年1月上旬号)と、清水監督は自作を分析し、続けて「それなしに(振り向き)、ずっとシャシンが見せられればいいと思ふのだがね。振り返へりがなくて、それで出来れば……さういふものを撮りたいと思って居るのだね」と理想の映画の形を語っている。そして、その発言を実行するかのごとく、4年後の本作において、世相を反映したプロパガンダ作品にもかかわらず、「だらだら歩いて居る」という、清水監督らしい反ドラマチックなシーンをちりばめて話を紡いで行こうとする大らかで自然なスタイルに、驚きと感動をおぼえずにはいられないのだ。

製作者にとっては、清水監督に作品を任せたことは誤りだったかもしれない。しかし、そのおかげで、映画ファンは、単なるプロパガンダ作品ではない、ささやかで美しい煌めきを持った本作が生まれたことに感謝しなくてはならないだろう。

本DVDは、すでに松竹クラシック作品数本のライセンス盤を発売しているコアラ・ブックス(=オフィスワイケー)のもの。「銀幕の名花 傑作選」と冠して、高峰三枝子、李香蘭(山口淑子)、岸恵子の主演作全10作品を初DVD化した、映画ファンには何とも嬉しいシリーズのうちの1枚だ。

マスターには、松竹が、かつて発売していたVHS用の1インチ・マスターではなく、「衛星劇場」放映用に再度HDテレシネしたマスター(HDCAM SRだと思う)を使用しているようだ。ただし、松竹が保存している原版が、かなり傷んだ16mmということもあり、VHSの画質から飛躍的に向上したという感じはほとんど受けない(フリッカーやコマのがたつきの修正など、最低限のレストアはされているようだが)。依然、全編に渡り、無数の黒い縦キズが出、コマ飛びも多く、白黒の諧調、ディテール表現も芳しくない画質だ。音声も、依然ノイズが多い。それでもVHSよりは聴き取り易くなってはいる。残念ながら、本編のみの収録で、予告編や特典などはなし(事務的なチャプター分けはされている)。パッケージ・デザインは、相変わらず、スチールを中央にレイアウトしただけの簡素で味気ないもの。

本来ならば、松竹が、徹底したレストアを施して、自社のSHVから発売すべき作品だと思うが(ご存命の山口淑子氏のコメンタリーやインタビューなどを収める最後のチャンスもあったろう)、やはり売り上げ的に厳しいと判断され、ライセンス盤発売ということになったのだろう。そう考えると、発売されただけでも良しとすべきなのかもしれない。

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