菊次郎の夏 [DVD]
北野 武監督がバイオレンス色を排して挑んだ、笑いと感動のロードムービー。祖母と暮らす小学3年生の正男は、夏休みを利用して親に会いに行こうとする。それを心配した近所のおばさんは、無職の旦那・菊次郎に一緒に付いて行くよう命令し…。
カンヌ国際映画祭で大絶賛を浴び、長時間に及ぶスタンディングオベーションを受け、パルムドールを逃した時には、カンヌの人たちが「ええ!?」と驚きの声を挙げたというこの作品ですが、私は長い間観る気になりませんでした。
「大人」と「子供」。それも、ちょっとヤクザな大人と可哀想な子供が登場するという……。
これは明らかに「臭い」だろうと判断したし、外国で大受けしたというのも、かなり割り引いて受け止めていたせいもありました。だけどようやく観る気になって、観た次第です。
要所要所に印象的なシーンが登場しはするのですが、全体的にのんびりとしたムードで淡々と進んでいき、時折笑い、時折欠伸が出る感じ。まさに夏休みの中盤頃のイメージだなぁと思いつつ、のんびりと眺めていました。悪くないけどカンヌで大絶賛というのはやはり誇張か……などと思いつつ。こののんびりムードはいったいいつまで続くんだろう?なんて思っていたら、唐突にやってきた物語の折り返し地点。
折り返し地点以降ラストまでの展開を「退屈」と見るか「しみじみ」と見るかは人それぞれかなと思いますが、私は「しみじみ」と観ました。しみじみと観ると、前半の時に感じていたのんびりムードが、実際は虚構だった事がわかってきます。大人と子供は共に信頼関係になく、ただ野放図に目的地を目指しているだけで、通りすがりに出会う大人たちも、親切ではあったけれど、それはあくまで「ついで」の範囲内で、最後までの面倒は見てくれなかったですよね。だけど、大人=菊次郎が子供=マサオを本当の意味で労るようになって以降は、通りすがりに出会う大人たちも変化した。「ついでの親切」を越えて、子供を労る菊次郎と同化せんばかりに「マサオの短い夏休みと、菊次郎の長い休み」に付き合う天使になった…!
星空に「天使」たちを思い浮かべて微笑むマサオの場面以降ラストまで、私の心臓はどくどくと脈打ち、ラストシーンでは嗚咽を堪えきれず、映画が終了した後も、何時間も余韻に浸っていました。素晴らしい映画でした。
僕はこの映画が好きだ。論理的に説明するのは難しいけれど、暴力や狂気に向き合ってきた北野監督だからこそ、この優しさと笑いに包まれた映画が生まれたのだと思う。何より監督が正直だから、この映画が胸に響くのだろう。
少年との旅を通じて、徐々に心を開いていく菊次郎。人を信用できず、普通にヒッチハイクできない菊次郎。母親を訪ねはすれど声をかけられないで帰る菊次郎。それを見て改めて思った。人間って、本当に不器用だなあと。愛されたいし、愛したいのにそれを素直に表現することができない。変わりたいのに、遠い昔につくられた心の傷が今の自分を維持しようとする。
少年との別れ際に、不器用に少年を抱きしめる菊次郎。あれが精一杯だったのだと思う。それでも、菊次郎は心を精一杯開こうとしたし、心が少し柔らかくなったからこそ、菊次郎は少年を軽くでも抱擁することができたのだろう。少年に名前を聞かれた時、それは、菊次郎が自分の中に置き去りにしてきた心の中の少年に向き合えた瞬間でもあった。馬鹿野郎の言葉は照れ隠し。
自己否定ではなくて、自己受容を経て、人が変わっていくのって美しいって思う。それがたとえわずかの変化だとしても、変わるってドキドキ。
1999年作品、前作HANA-BIが海外で賞を獲得したことによりそれまで冷淡だった国内のマスコミもこぞって北野武を映画監督として遇するようになる(90年代初期に現在のようにネット事情が発達していなかったことが悔やまれる)、北野は「その男、」以来かわらずに作品作りを続けていたわけで特に大手マスコミの見識のなさは責められるべきと考える、
本作からめでたくメジャー公開作に復帰、前宣伝でたけし主演の人情コメディであることが浸透していたこともありロードショー時の映画館には世代を超えた観客が集いそれなりの観客動員となった、何度も爆笑が繰り返される館内に「男はつらいよ」を見ているような錯覚も覚えたことを思い出します、
「三丁目の夕日」が大ヒットしているように実は映画館へ足を運ぶ観客のかなりの割合が人情コメディを望んでいる、「男はつらいよ」を楽しみにしていた観客層を集客するシリーズがないのは映画会社の怠慢だぞ、各社の制作の人!
物語は「パーフェクト・ワールド」にも似た少年と中年男のロード・ムービー、北野映画としては珍しく極悪人が登場しない(一番の悪人は菊次郎だったりする)ので親子で鑑賞することも可(ただしアメリカでは少年にいたずらしようとするシーンと顔が変わるほど殴られるシーンのためPG13か15に指定されてしまった)、
ナイフの上を歩くような北野映画独特の暴力描写不用の人情喜劇を見たい人向けです、基本が人情劇なので得意のすっとぼけた喜劇シーンの微笑ましさは北野作品中でもっとも毒気の少ない一般受けするものです、「キッズ・リターン」同様な「人生はすてたものではない」という前向きなメッセージが心地よい映画です、
一度鑑賞すれば、浅草・ちんぴら・祖母と暮らす少年・旅の途中で出会う人たち(流れ者だったりしっかりと暮らす人だったり)とそれぞれのエピソードを思い出すだけで切ない気持ちになれること間違い有りません、菊次郎がかつては芸人を目指したことがあったらしいことが数シーンからうかがえることが実は隠し味のような深みを与えます、
なお、浅草各所で切り取られた映像が絶妙に編集されており浅草周辺に詳しい人には実際の風景と映画で編集された風景のつながりが奇妙に感じるはず、北野ファンは六区・ひさご通り・観音裏・二天門・桜橋へぜひ行ってみましょう、
退屈このうえない。
シャイの仮面をかぶってはいるが、はきけがするほどくさい。
「おじちゃんなんていうの?」... 続きを読む
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